我々の目的は、アポトーシスにきわめて重要な分子であるcaspase-8の機能異常が、細胞のがん化に関与することを明らかにすることにある。我々は最近このcaspase-8のsplice variant(caspase-8L)を見いだし、その発現がある種のリンパ系腫瘍細胞で大きく偏っていることを報告した。Caspase-8Lは、caspase-8の酵素活性部位のみを欠失するため、アポトーシスを抑制することが予想された。本年度の成果の第一は、caspase-8Lの機能を細胞生物学的に明らかにしたことである。すなわちcaspase-8Lがcaspase-8によるアポトーシスをdominant negativeに抑制すること、その機序がFADDとcaspase-8との結合を競合的に阻害することを明らかにした。Caspase-8Lが過剰に発現することにより、アポトーシスが抑制されがん化が生じる可能性が考えられる。第二の成果は、caspase-8の全エクソンについて各種がん組織で変異を同定する解析システムが動き始めたことである。第三の成果はcaspase-8を選択的に欠損したヒト由来T細胞株を樹立したことである。この細胞でがん組織から得られた変異caspase-8を発現させることにより、正常のcaspase-8の影響を受けずに変異caspase-8の機能解析が可能になった。
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