DNAメチル化の異常は、癌抑制遺伝子不活化の機構として重要である。しかし、異常メチル化の分子機構や癌化における役割に関しては不明な点が多い。本研究では、MCA法により癌において異常メチル化している遺伝子を多数スクリーニングすることにより、メチル化により不活化される遺伝子のプロモーターの塩基配列やクロマチン構造に、共通性や特異性があるか検討する。また、プロモーターとその近傍の領域のメチルを詳細に解析し、メチル化DNAとメチル化されていないDNAに結合するヒストンのアセチル化の状態を明らかにする。MCA法およびBisulfite-PCR法を用いて、癌において異常メチル化している遺伝子の情報をゲノムレベルで収集した。その結果、メチル化の標的遺伝子として新たに、細胞周期調節遺伝子、p57KIP2、CHFR、アポトーシス関連遺伝子として、DAPK、TMS1、HRK、CABIN1などの遺伝子が消化器癌でメチル化により高頻度に不活化されていることを明らかにした。また、膵癌および口腔扁平上皮癌において異常メチル化している新規遺伝子を約200個同定した。これらの遺伝子のメチル化による遺伝子不活化にヒストンの脱アセチル化が関与すること、遺伝子の不活化には転写開始点近傍の限局した領域のメチル化が重要であること、DNAメチル化はヒストンアセチル化に対してドミナントに遺伝子発現を抑制することが明らかとなった。
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