1.転写伸長因子エロンガンAの遺伝子欠失ES細胞とマウスの作製 VHL癌抑制蛋白と相互作用する転写伸長因子エロンガンの触媒サブユニットであるエロンガンAを欠失したES細胞を作製した。エロンガンA(-/-)のES細胞では、細胞増殖速度の低下と細胞体積の増大を認めるが、解析によりこれらが細胞周期G2/M期での停止に基づくものであることが判明した。次いで、野生型と作製したエロンガンA(-/-)のES細胞とを用いてDNAチップ解析を実施したところ、両者の間で一群の遺伝子の発現量にのみ有意な差が認められ、エロンガンAがある特定の遺伝子の発現をのみ調節していることが判明した。現在、発現に差の認められた遺伝子とG2/M期停止との関連について解析中である。また、ヘテロマウスの掛け合わせによりホモのエロンガンA欠失マウスを作製中である。 2.新規転写伸長因子エロンガンA3の単離と機能解析 エロンガンAファミリーの新規メンバーであるエロンガンA3のcDNAをクローニングした。エロンガンA3は、エロンガンAと同様それ自身で転写伸長活性を有するが、エロンガンAとは異なりエロンガンBCとの結合による転写伸長能の活性化を受けないことが判明した。そこで、エロンガンA3のいくつかの領域を該当するエロンガンAの配列で置換したキメラ蛋白を作製してエロンガンBCに対する反応性を調べた結果、エロンガンAのC末端領域の配列がBCによる括性化に重要であることが明らかになった。 3.VHL癌抑制蛋白の新規標的分子の単離 BaitであるVHL蛋白を安定化させるためにエロンガンBとCとを共発現する酵母株を用いてTwo-hybridスクリーニングを実施した結果、ショウジョウバエの癌抑制蛋白の1つであるTid(tumorou s imaginal discs)56のヒトホモログTid-1がVHL蛋白と相互作用する分子として単離された。
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