研究概要 |
本研究の目的は、Bach1とBach2遺伝子の異常が実際ヒトの悪性腫瘍の原因となっているかどうか、あるいは悪性度を規定する原因となっているかどうかを明らかにすることである。具体的には、1.Bach1がダウン症候群の急性巨核球性白血病や一過性骨髄異形成症候群の原因遺伝子であるかどうかを明らかにするために、作製したBach1のトランスジェニックマウスの表現型を解析する。2.Microarrayを用いて見い出したB細胞特異的転写因子Bach2の標的遺伝子(Bc12ファミリーのAl, IL-12のホモローグEBI3)がBach2によってどのように制御されているかを明らかにする。3.Bach2の標的遺伝子のB細胞分化・細胞死に対する役割を明らかにする がん遺伝子Mafのファミリーとヘテロ二量体を形成するBach1とBach2転写因子の機能を解析し、本年度は以下の点について明らかにした。 1.Bach1トランスジェニックマウスの解析の結果、以下のことが明らかとなった。Bach1トランスジェニックマウスは1年半の観察期間では白典病の発症は見られていないが、血小板造血能をproplatelet formation assay(PPF)で解析したところ、著明な低下が認められた。また、アセチルフェニルヒドラジン(APH)を投与し、酸化刺激を与えたところ、正常マウスでは溶血性貧血が誘導されたが,Bach1トランスジェニックマウスではほとんど貧血が誘導されなかった。 2.Bach2因子の下流にあり、Bach2により負に制御されている標的遺伝子の候補を2つ(Bcl-2ファミリーのメンバーAlとIL-12のホモローグEBI3遺伝子)をマイクロアレイ法により同定した。ヒトA1遺伝子とEBI遺伝子を単離し、プロモーターの機能解析を行った結果、Bach2によりこれらのプロモーター活性が抑制されることを見い出した。
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