我々はインターロイキン2やGM-CSFによりチロシンリン酸化される分子としてFYVEfinger分子Hgsを遺伝子単離した。その機能を調べるためにHgs遺伝子ホモ変異マウスを作成したところ、胎生期10.5日以内に死亡した。このメカニズムとして、HgsはSmad2やSmad3分子と直接会合し、これらSmadsをアクチビン受容体に効率よく会合させる機能を有することを発見し、Hgsの変異がアクチピン受容体からの情報伝達不全を引き起こしていることを証明した。Smad2、Smad4は癌抑制遺伝子として働いていることが明らかにされている。従って、我々はSmads活性化に重要なHgsもまた癌抑制遺伝子として機能している可能性を想定し、その検討のためにCre-loxPシステムを用いたHgsコンディショナルノックアウトマウスを作成しようと試みている。ドミナントネガティブHgsがアクチビン以外にもSmad活性化シグナルを抑制するかどうかを調べた結果、TGF-βとともにBMPのシグナルも抑制する可能性を見出した。Hgsと同様FYVEfingelドメインを持つSARAのドミナントネガティブ分子(SARA DN)がTGF-βのシグナルを強く抑制することは報告されているが、我々はSARADNのBMPシグナルに対する抑制作用は非常に弱いという結果を得ており、それらFYVEfingerドメイン分子のSmad活性化における使い分けがある可能性もある。Hgsコンディショナルノックアウトマウス作成の過程で、Hgs発現量の極めて低い細胞株を樹立することが出来た。しかし、この細胞株ではTGF-βやBMPのシグナル伝達に明らかな異常は認められていない。現在、この細胞にCreを発現させ、完全にHgsを欠失した細胞株を得ようとしているところである。
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