研究概要 |
ユビキチンによる膜蛋白質のリソソームへの輸送機構の解明を目指して、ユビキチン-インバリアント鎖キメラを用いて検討した。その結果、ユビキチンに存在するLeu44-Ile45がリソソームへの輸送に重要であり、いずれかをAlaに置換した変異体はエンドサイトーシスされた後EEA1の存在する初期エンドソームに蓄積し、後期エンドソーム・リソソームへの輸送が傷害されることがわかった。Hrsは初期エンドソームの表在性膜蛋白質であり、ユビキチン化された蛋白質の後期エンドソーム・リソソームへの輸送を制御することが示唆されている。そこで我々の作成したユビキチンキメラとHrsの相互作用を免疫沈降法により解析したところ、野生型ユビキチンキメラではごく弱い結合が見られたのに対し、LeuあるいはIleのAlaへの変異体ではより強い結合が観察された。従って、Hrsはユビキチンを認識して初期エンドソームから後期エンドソームへと受け渡す過程に関与しており、その認識にはユビキチンのLeu44,Ile45が重要であること、Leu44,Ile45のAla変異体はHrsとの親和性が異常に高くなるため、Hrsから下流のエフェクターへのユビキチンキメラの受け渡しがスムーズに行われず、初期エンドソームから下流への輸送が阻害される可能性が示唆された。 また、上皮細胞はフィルターメンブレン上で培養すると1層の細胞層を形成するが、われわれが新規に単離した上皮細胞特異的に発現し、新規に合成された膜蛋白質の側底面への選別輸送を制御する分子μ1Bを欠失した上皮細胞では1層とならず多層に折り重なって増殖する。したがって、μ1Bの存在下では上皮細胞の分裂軸は細胞層の平面に垂直に形成される(細胞は横方向に分裂する)が、μ1B非存在下では分裂軸は細胞層の平面に対してランダムに形成され、縦や斜めにも分裂する可能性が示唆された。
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