チロシンキナーゼ受容体Ephファミリーは、そのリガンドephrin分子との相互作用の結果、それぞれの細胞に反発作用を生じることが知られているが、その信号伝達機構は不明な点が多い。本研究ではWntの下流分子であるdishevelled(dsh)がEphB受容体およびephrin-Bリガンドとそれぞれ複合体を形成し、Eph/ephrinによる反発作用に関与しているという結果が得られた。dshはEphB受容体とはSHアダプターを介して間接的に、またephrin-Bとは直接結合およびSHアダプターを介した間接的な結合によってそれぞれ複合体を形成し、その結果dshはリン酸化されることが明らかとなった。dshのドミナントネガテイブ体の発現により、アフリカツメガエルの発生においては後脳の分節形成が阻害され、それはEphあるいはephrinを発現している後脳の細胞群がそれぞれに対するリガンド、または受容体を発現している領域から反発され移動するメカニズムが阻害されたことに基く結果であると考えられた。またEph受容体とephrinの相互作用ではそれぞれの細胞でRhoAの活性化が認められるが、dshはその場合にRhoAの活性化を促進する作用を持つことがわかった。一方dsh単独を細胞に過剰発現させても、RhoAの活性化は認められず、dshはEph/ephrinの相互作用で生じる信号伝達に関与し、RhoAの活性化を制御することなどで反発性細胞運動に関わっていることが示唆された。
|