研究概要 |
Gab1,Gab2は、PHドメインを有し、SH2,SH3結合配列を有するアダプター分子であり、増殖因子・サイトカイン刺激によりチロシンリン酸化され、シグナル伝達分子SHP2やp85PI3キナーゼと会合することが明らかとなっている。(1)Gab1遺伝子欠損マウスより調整した線維芽細胞を、SV40LargeT抗原遺伝子で不死化させた細胞株を樹立した。Gab1-/-細胞株においては、EGF,PDGF,サイトカインIL-6によるERKMAPキナーゼの活性化が減弱していた。さらに、Gab1-/-細胞では、EGFによるRasの活性化が減弱していることから(GTP結合型Rasの減少)、Gab1はEGF細胞内シグナルにおいて、Rasの上流で機能していると考えられた。ガン遺伝子v-erbB2及びv-srcによる形質転換能(軟寒天培地コロニーアッセイ、ヌードマウス腫瘍形成)を、Gab1-/-細胞を用いて検討した結果、Gab1はv-erbB2による腫瘍形成に必要であること、逆にGab1はv-srcによる腫瘍形成を抑制していることが明らかとなった。(2)Gab2遺伝子欠損マウスのおいては、胃粘膜及び皮膚において肥満細胞が減少していた。Gab2欠損マウス由来の骨髄性肥満細胞は、SCFに対する増殖応答性が減弱していること、SCFによるERK,AKTの活性化が低下していることを見出した。このことは、Gab2がSCFにシグナル及び肥満細胞の増殖に必要であることを示している。また、Gab2欠損マウスから採取したT細胞は、T細胞受容体刺激(CD3とCD28の共刺激)に対する反応性が亢進しており、Gab2欠損マウス血中抗体価が高値であることから、Gab2は、T細胞受容体のシグナル伝達を抑制していると考えられた。
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