研究概要 |
BSAC(Basic,SAP,and coiled-coil domain)はTNF誘導性細胞死を抑制することを指標とした機能的なスクリーニングにより我々が同定した新規抗アポトーシス遺伝子である。BSACのアポトーシス抑制のメカニズムを検討したところ、TNFにより誘導されるカスパーゼ3およびカスパーゼ8の活性化を抑制していることが明らかとなった。一方、直接ミトコンドリアに作用しアポトーシスを誘導すると考えられるスタウロスポリンやUV照射によるアポトーシスに対しては抑制効果を認めなかった。またBSACの細胞内局在を検討したところ、主に核に存在していることから、BSACが直接TRADD,FADD、カスパーゼあるいはBcl-2ファミリーに会合することでカスパーゼの活性化を抑制している可能性は否定的であった。BSACが転写の活性化因子で、その結果なんらかの抗アポトーシス遺伝子の発現上昇を介して抗アポトーシス効果を発揮している可能性を考え、酵母の転写因子であるGAL4との融合タンパクを作製し、レポーターアッセイを行ったところ、BSACは著明な転写活性化能を有することが明らかとなった。現在種々のレポーター遺伝子を用い、BSACの標的配列を同定しようと検討中である。さらに生理的な機能を明らかにするためにBSACノックアウトマウスおよびトランスジェニックマウスを作製中であり、現在ターゲテイングベクターの構築は終了し、ES細胞の相同組み換え体のスクリーニング中である。一方トランスジェニックマウスはトランスジーン陽性のラインが4系統得られており、今後mRNAレベルおよびタンパクレベルでのBSACの発現を検討する予定である。さらに最近BSACが、ある種の白血病で見られる染色体転座により生じる融合タンパクの片割れであることが明らかにされ、このことは、我々の初めて明らかにしたBSACの抗アポトーシス機能が白血病発症に関与している可能性を示唆するものである。
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