Rasファミリー因子の個体内機能を明らかにする目的で、以下の実験を行なった。Ras抑制性因子Gap1^mノックアウトマウスの作成に関して、組換えアレルを有するES細胞クローンを複数作成し、キメラマウスの作成を行なった。 SH2を有するアダプター因子Chatは、Casに結合しJNKの活性化を介してT細胞におけるIL-2産生に必須の因子であることを明らかにしてきたが、さらにChatがCas-Crk-C3G系を制御することにより、Rap1を活性化することを示した。その際に150kDaのチロシンリン酸化タンパク質との結合が重要であると考えられた。またT細胞刺激における細胞接着の亢進にCDC42/Ackを介したRap1活性化が必須であることを示した。 Rasファミリー因子の標的因子として、多くのタンパク質キナーゼが活性化され、さらにシグナルを伝達していくことが示されている。従って細胞内のキナーゼ基質を網羅的に解析することは、シグナル伝達系の生理的意義の理解の上で重要なステップである。本研究では、金属キレートカラムを用いて、リン酸化タンパク質が効率的に精製し得ることを示し、2次元ゲル電気泳動上で、MEK、ERK、RSKの活性化を可視化した。さらに新規ERK基質と考えられる因子の同定を行なっている。
|