研究概要 |
ヒトゲノムプロジェクトの完成を間近にして,遺伝子治療の可能性に対する期待も益々大きくなることが予想される.しかしながら,これまで多数の遺伝子導入方法の開発が行われてきたにもかかわらず,ほとんど全ての研究は最終的な遺伝子発現を指標として行われ,遺伝子自体の細胞内動態はブラックボックスとなっている.我々は「細胞内動態制御シグナルの分子スクリーニングシステムを確立し,人工遺伝子キャリアーの細胞内動態を最適化する」ことが焦眉の急であると考え,そのために細胞内各オルガネラ中の遺伝子量を定量的に測定し,各素過程を速度定数で定量的に評価できるスクリーニング系を確立することを第一目標とした.申請者は,平成12年度に,本特定領域研究にて,PCR法とサザンブロッティング法を用いて核内遺伝子量を定量する新たな手法の開発に成功した(Tachibana, et al., accepted by Pharm. Res.).平成13年度は,以下のような検討を行った. 1)細胞内動態の素過程の分子スクリーニングシステムの構築:細胞内の遺伝子の分布は,細胞膜,細胞質、エンドソーム、ライソゾームそして核が主要な分画である.各分画中の遺伝子量は,我々が確立したPCR法とサザンブロッティング法により定量した.この定量法に基づいて,遺伝子の細胞内動態の各素過程を速度定数として定量的に評価し,分子スクリーニングシステムを構築した. 2)非ウイルスベクターの細胞内動態の最適化:細胞内動態のそれぞれの素過程について最適化した.例えば,kescに関しては最大になるように,kdeg, lys(ライソゾームでの分解)に関しては最小になるように分子設計を行った.各ステップの促進あるいは抑制は核局在化シグナルのようなシグナルペプチドや特異的脂質のオルガネラ局在化機構を導入することにより検討した.
|