(1)電極の開発:まずは、肺癌により全周性に狭窄した中枢気道の開存性の改善を図るために用いる電極として、製作が比較的容易であるバスケット型カテーテル電極を作成した。外径2〜3mmのポリスチレンチューブに内包された電極を気道狭窄部で押し出すと先端がバスケット状に広がる。35度で硬化、形状回復する形状記憶合金を電極の材料に用いてあり、カテーテル先端が鋭い針状になっていてバスケット開口時に各電極間が数mmとなるものを閉塞部位の腫瘍に穿刺して電極穿孔を施行する仕様の電極である。 (2)マウスにおける肺扁平上皮癌細胞株におけるelectrochemotherapyの効果の検討:2種類の肺扁平上皮癌細胞株をマウスの背部に接種して作った癌を、プレオマイシン腹腔内投与後に電気穿孔を施行した場合は、腫瘍の著明な縮小を認めたが、プレオマイシン投与のみ、電気穿孔のみの場合は、腫瘍はコントロールと同様に増大した。以上より、electrochemotherapyが肺扁平上皮癌に対して有効であることが動物実験で示唆された。 (3)犬における安全性実験:犬において気管支鏡下にカテーテル電極を気管支に設置して、遺伝子導入に用いて従来法に比べてはるかに効率の良いことが証明された低電圧で数回短形波の電圧をかける新しい電気穿孔法を施行した。電気穿孔時には、心電図同期装置により、電気刺激が心電図のR波に同期して始まりR波より200ms以内に電気穿孔が終了するように設定した。犬において、電気穿孔時の軽度の気道攣縮はみられたが、不整脈や電気穿孔部の組織損傷などはみられなかった。 以上より、電極の開発がなされ、electrochemotherapyの肺扁平上皮癌に対する有効性と安全性が動物実験で示唆された。
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