研究概要 |
放射線照射と温熱による増感機構について解析するとともに,最近開発されたHSPインヒビターを用いて,そのストレス応答シグナル伝達に関わる分子の変化と細胞周期の変化について解析した.特にHSPインヒビターによる熱耐性の抑制が,放射線増感効果をもたらすかどうか,その有効な併用方法とその分子生物学的機構について検討を行うことを目的とした.まず低線量率照射と温熱の併用効果を算出した.増感効果は,40度から41.5度で高く,42度を超えるとむしろ低下していった.またマイルドハイパーサーミアで認められる慢性熱耐性は,持続照射の併用により部分的に抑制された.G1ブロックによる放射線抵抗性のS期細胞の減少と熱耐性蛋白の発現抑制が増感機構として証明された.またカフェインを低濃度で照射,温熱とともに作用させると細胞死は増加し,この効果は変異型P53細胞で顕著であった,HSPインヒビターは,41度の温熱時に誘導される慢性熱耐性を抑制し,細胞の温度感受性を増強した.このとき熱感受性のS期細胞が増加する傾向が認められた.ウエスタンブロットによる解析では,HSPの発現抑制が明らかであったが,HSF-1の活性化は抑制されていなかった.また,低線量率照射の効果は,温熱を加えなくともHSPインヒビター投与により明らかな増感が認められた.これまでの基礎研究をもとに,最も増感効果が高いとされる放射線照射と温熱の同時併用の可能性について,腔内照射と腔内加温をモデルとしてその最適な条件を検討し,進行食道癌を対象に良好な局所効果を確認した.また,難治性再発腫瘍を対象として,同時併用のすぐれた局所効果を確認した.
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