研究概要 |
放射線照射と温熱による増感機構について解析するとともに,細胞のもつストレス応答シグナルの抑制が,放射線照射効果をどのように修飾するかを明らかにすることにより,放射線照射と温熱の有効な併用方法とその分子生物学的機構を解析することを目的とした.また,放射線照射ならびに温熱の効果に大きな影響を与える低酸素ストレスについて,その意義と治療効果への影響を明らかにすることを目的とした.マイルドハイパーサーミアと放射線照射の併用実験では,熱耐性の抑制や放射線照射からの亜致死障害からの回復阻害など,互いにその効果を高める機構が存在すると考えられ,併用のタイミングが重要なファクターと考えられた.また,HSPを制御することで,マイルドハイパーサーミアの効果が明らかに増感するだけでなく,放射線照射効果をも十分に増強させることができると考えられた.臨床的には,胸壁浸潤型肺癌で放射線照射と温熱の併用が,放射線単独にくらべ有効であることが明らかとなった.放射線と温熱の効果に重要な影響を与える低酸素ストレスの定量化をさまざまな方法で行った.低酸素細胞マーカーであるβ-D-IAZGPは,血液中の約8倍の高濃度で腫瘍に集積が認められた.中枢神経への取り込みが有意に少なく,腫瘍の大きさにかかわらずその取り込みが評価可能であり,非侵襲的な低酸素細胞分画の定量法として,臨床上の有用性が高いと考えられた.III期子宮頸癌の生検組織を用いて,低酸素で誘導されるHIF-1の発現を検討した結果,HIF-1αの高発現した腫瘍は遠隔転移の確率が高く,腫瘍の悪性度を反映する因子であることが明らかとなった.
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