ゲノムレベルにおいて遺伝子発現プロファイルパターンと肝細胞癌の臨床的あるいは病理学的診断との相関を解析することにより、肝細胞癌の診断アルゴリズムの開発を行うことを目指している。さらに肝癌特異的な発現を示す遺伝子の肝発がんにおける役割を検討する。すなわち、6万個の遺伝子についてGeneChipを用いて、肝細胞癌患者の非癌部と癌部組織それぞれから抽出したmRNAについて発現プロファイリング解析をおこない、従来の少数の腫瘍マーカーによる診断ではなく、発現プロファイル解析から多数の遺伝子の発現パターンを用いて癌と健常部との識別、予後因子の評価を行うという新しい診断アルゴリズムの開発を試みた。癌組織と非癌部組織の識別は階層的クラスタリングにより容易に行われたが、組織分化度による分類には関与する因子も多いと考えられ、高分化型と中分化型肝細胞癌の識別についての分類は階層的クラスタリングや主因子分析では困難であった。ノンパラメトリックな分析法であるKruskal-Wallisテストと非階層的クラスタ解析を組み合わせることにより、新たなスコアリングシステムを作成した。高分化型肝細胞癌においても高発現するような遺伝子についてはモノクロナル抗体の作成に着手した。
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