研究課題/領域番号 |
13218022
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
伊庭 英夫 東京大学, 医科学研究所, 教授 (60111449)
|
研究分担者 |
伊藤 太二 東京大学, 医科学研究所, 助手 (60343109)
箕口 滋 東京大学, 医科学研究所, 助手 (60322757)
水谷 壮利 東京大学, 医科学研究所, 助手 (00376617)
|
キーワード | 遺伝子治療 / 再生医療 / レトロウイルスベクター / 癌抑制遺伝子 / Brm遺伝子 / クロマチン構造変換因子 / ジーンサイレンシング / ヒストンアセチル化 |
研究概要 |
15年度までの成果から、クロマチン構造変換因子SWI/SNF複合体の触媒サブユニットBrmがMuLVを基盤とするレトロウイルスベクターの発現維持に必須であることが示唆されてきた。そこで本研究では宿主の内在性Brmの機能とその生合成過程の制御の解析から開始した。調べた40株のヒト腫瘍由来細胞株の中にBrmの発現を欠失する細胞株を7株同定した。これらの細胞株では例外なく極めて速いジーンサイレンシングを受けることからレトロウイルスの発現維持には、「Brm型SWI/SNF複合体」が必須であることが示された。またこれらの細胞内ではいずれもBrm遺伝子の転写開始・伸長はおきているが、そのmRNAは検出されず、この遺伝子が後転写レベルで抑制されていることが示された。さらにLTR領域に変異を入れ、Brm発現欠失細胞内でもジーンサイレンシングに耐性でかつ自己不活化型のレトロウイルスベクターの作出に成功した。またBrmタンパク質の発現抑制は一過的にHDAC阻害剤で処理することにより数週間にわたって持続して解除され、それに伴い処理を受けた細胞ではレトロウイルスがジーンサイレンシングを受けにくくなることを示した。Brm遺伝子自身に癌抑制活性があることも示し、Brm発現欠失細胞をHDAC阻害剤で処理すれば、Brmタンパク質の誘導の誘導によりその発癌性を低下させることができる上に、レトロウイルスベクターによる外来遺伝子の発現維持効率を著しく改善しうることが判明した。この成果は、Brm欠失細胞株に対する癌遺伝子治療法に極めて有用な知見を与えた。
|