胃がん、大腸がんなどの固形がんは、一般に抗がん剤による治療に抵抗性を示す。そのため、抗がん剤に対する感受性を高める方法.耐性を克服する方法の開発は、がん治療成績の向上において重要な課題である。本研究では、抗がん剤効果増強、耐性克服という観点から、プロテアソーム蛋白分解系の制御機構を明らかにするとともに、その分子標的としての可能性を検討することを目的とし、以下の研究成果を得た。 1)固形がん内部で認められる低酸素やグルコース飢餓などのストレスによって誘導されるプロテアソームの核内蓄積が、トポイソメラーゼIIを標的とするエトポシドなどの抗がん剤の耐性誘導に関与していることを示した。また、こうした耐性誘導の抑制を指標にスクリーニングし、有効な新規プロテアソーム阻害剤としてBelactosin A誘導体を見い出した。 2)トポイソメラーゼIIαのN末端領域が上記のストレスによる分解の制御ドメインとして機能することを明らかにした。さらに、同ドメインと相互作用し得る因子を酵母ツーハイブリッド法にて同定した。 3)プロテアソーム蛋白分解系によって制御される因子として、新たにカンプトテシン(CPT)の標的分子トポイソメラーゼI及び低酸素下での細胞生死の制御に重要なHIF-1αについて検討し、トポイソメラーゼIのSUMO化サイトの同定に成功するとともに、細胞の生と死という相反するHIF-1αの機能制御にリン酸化が関与することを明らかにした。
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