胃がん、大腸がんなどの固形がんは、一般に抗がん剤による治療に抵抗性を示す。そのため、抗がん剤に対する感受性を高める方法・耐性を克服する方法の開発は、がん治療成績の向上において重要な課題である。本研究では、抗がん剤効果増強、耐性克服という観点から、プロテアソーム蛋白分解系の制御機構を明らかにするとともに、その分子標的としての可能性を検討することを目的とし、以下の研究成果を得た。 カンプトテシン類の標的分子であるトポイソメラーゼIは、カンプトテシン処理によりプロテアソーム依存的な分解を受け、この分解を阻害するとカンプトテシンの効果が増強される。カンプトテシン処理によりトポイソメラーゼIは、ユビキチン化及びSUMO化の修飾を受けるが、今回、トポイソメラーゼIの主要なSUMO化サイトの同定に成功し、トポイソメラーゼIのSUMO化は、カンプトテシンによって誘導されるクリーバブル複合体の形成量を増大させること、その結果カンプトテシンによるアポトーシス誘導を増強すること、さらにカンプトテシンによるトポイソメラーゼIの酵素活性阻害と関連することを明らかにした。また、グルコース飢餓や低酸素などのストレス下で起こるプロテアソーム核蓄積は、トポイソメラーゼIIαの分解の促進並びに抗がん剤耐性誘導に関与することを明らかにした。さらにトポイソメラーゼIIαと相互作用しストレス下での分解を促進する因子について解析を進めた。
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