本研究では、固形がん内部に認められるグルコース飢餓や低酸素などのストレス誘導性の耐性を中心に、抗がん剤耐性・感受性に関るプロテアソーム蛋白分解系の制御機構を明らかにし、その分子標的としての可能性を検討することを目的としている。本年度は、抗がん剤の直接の標的分子で、プロテアソーム蛋白分解系が抗がん剤の効果の減弱に関与しているトポイソメラーゼ(トポ)IとトポIIαの分解制御機構についての研究を進め、以下の成果を得た。 カンプトテシン(CPT)類の標的分子であるトポIは、CPT処理によりプロテアソーム依存的な分解を受け、この分解を阻害するとCPTの効果が増強される。今回、このトポIの分解を制御する因子としてCullin(Cul)3の同定に成功した。実際クリーバブル複合体中のトポIの分解は、Cul3の高発現により亢進し、逆にCul3ノックダウンにより低下した。またCul3高発現により、CPT耐性が誘導されることが明らかになった。一方、グルコース飢餓や低酸素などのストレス下で起こるトポIIαの分解機構について解析を進め、昨年度までに同定していたGRDD(Glucose-Regulated Destruction Domain)と名付けた分解制御ドメインがストレスで活性化される分解シグナルとして機能することをさらに確認するとともに、この制御にCOP9/SignalosomeのサブユニットであるJab1/CSN5が関与することを明らかにした。 これらの成果は、トポ標的抗がん剤による治療の効果予測や現在臨床試験の進められているプロテアソーム阻害剤との併用に岬治療研究に大きな示唆を与えるものと期待される。
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