本研究は、グルコース飢餓や低酸素など固形がんで特徴的に認められるストレスによって誘導される薬剤耐性を中心に、抗がん剤耐性・感受性に関るプロテアソーム蛋白分解系の制御機構を明らかにし、その分子標的としての可能性を検討することを主目的として進めてきた。本年度は、プロテアソーム蛋白分解系の関連することを見出しているトポイソメラーゼ(トポ)IとトポIIαの分解制御機構についての研究、またこうした研究を基盤として新たにトポIIαの分解に導くストレス応答-unfolded protein response-の制がんの標的としての可能性についての検討を鋭意すすめた。その結果、トポイソメラーゼ(トポ)Iの分解を制御する因子としてCullin (Cul) 3の同定に成功し、Cul3がカンプトテシン類の感受性を制御する因子であることを明らかになった。一方、グルコース飢餓や低酸素などのストレス下で起こるトポIIαの分解機構については、分解制御ドメインGRDD (Glucose-Regulated Destruction Domain)を介したJab1/CSN5による制御を見出し、論文発表した。またGRP78の誘導を特徴とするストレス応答unfolded protein response (UPR)を抑制する化合物versipelostatinについて検討し、グルコース飢餓環境下で選択的に強い細胞毒性を示すことを明らかにした。この環境選択的な細胞毒性は、UPRの抑制とよく一致しており、UPRの抑制が新しいがんの治療戦略となる可能性が示唆された。
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