研究概要 |
1.抗体/受容体キメラを用いた遺伝子導入細胞の選択的増幅法の開発 本研究ではまず、培養細胞レベルで抗体/受容体キメラを用いた目的遺伝子導入細胞の選択的増幅法を確立することを目指した。エリスロポエチン受容体(EpoR)のリガンド結合ドメインを抗ニワトリ卵白リゾチーム(HEL)抗体HyHEL-10の可変領域VHまたはVLに置換し、細胞内ドメインをIL-6受容体β鎖であるgp130に置換したキメラ受容体(それぞれHg、Lg)発現ベクターを作製した。さらに、目的遺伝子のモデルとして緑色蛍光タンパク質EGFPを選び、Lgの下流に内部リボソーム結合部位(IRES)配列を介して連結した(LgIGFP)。EGFP陽性細胞をHELの添加によって選択的に増幅できるかどうかを検証するために、IL-3依存性血球細胞であるBa/F3に対しレトロウイルスを用いてHgとLgIGFPの同時導入を行った。6〜7日後、IL-3を洗浄除去し、HELまたはIL-3添加培地中で選択した。選択前後におけるEGFPの発現量および陽性率をFACSによって比較した結果、選択前のEGFP陽性率は1%程度であったが、HEL添加培地中で増殖が見られ、選択後のEGFP陽性率はほぼ100%であった。それに対し、IL-3添加培地中で培養した場合は選択前の陽性率とほぼ同等であったことから、キメラ受容体由来の増殖シグナルにより遺伝子導入細胞が選択的に増幅されたと考えられる。 2.遺伝子導入樹状細胞の選択的増幅 目的遺伝子とキメラ受容体を確実に同時発現させるために、Hg, LgおよびEGFPをIRESを介してタンデムに連結したレトロウィルスベクター(pMX-Hg-I-Lg-I-EGFP)を作製した。このベクターをまずBa/F3細胞に導入した結果、EGFPの発現が見られ、またHEL濃度依存的に増殖したことから、このベクターが正しく機能することが確認された。次に、マウス骨髄から樹状前駆細胞を得て、IL-6,sIL-6Rα,SCFを併用添加して培養したところ、前駆細胞を未分化状態のまま増殖維持できることが分かった。そこで、樹状前駆細胞にpMX-Hg-I-Lg-I-EGFPをレトロウイルスにより導入したところ、導入効率は1.1%と低かったものの導入できることが分かった。現在、遺伝子導入樹状前駆細胞をHELとSCFを併用添加した培地中で選択しており、経時的にEGFP陽性細胞率をFACSで測定し、本手法を用いた選択的増幅の実現可能性について検証中である。
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