海洋無脊椎動物の抽出物、について管腔形成阻害および酵素阻害アッセイを行った。酵素は血管新生に深く関与するとされている膜型マトリックスメタロプロテアーゼ1(MT1-MMP)およびマトリックスメタロプロテアーゼ2(MMP2)を用い、阻害物質の選択性もあわせて検討した。その結果、三重県五ヶ所湾産の末同定ホヤおよび鹿児島県口之永良部島産の末同定海綿に強力かつ選択的なMMP2阻害活性が認められた。 冷凍保存されていたホヤ検体800gを抽出後、MM2阻害活性を指標に溶媒分画、各種クロマトグラフィーを用いて阻害物質を単離した。阻害物質の構造は各種スペクトルデータからその平面構造を新規化合物である12-hydroxystearyl-1-sulfateと決定した。絶対立体化学は改良Mosher法および合成標品との比較より、鏡像異性体の混合物であることが明らかになった。新規MMP2阻害物質12-hydroxystearyl-1-sulfateはMMP2をIC_<50>値9.0μg/mLで阻害した。 鹿児島産海綿を有機溶媒で抽出後、生物活性を指標に分画をすすめ、鮮やかな青色蛍光を示す物質を活性本体として5.0mg単離した。阻害物質の分子量は356と決定されたが、プロトンNMRにおいて低磁場領域に3つのシグナルを与えるのみで、スペクトル解析による構造決定は困難であった。現在化学構造を検討中である。
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