研究概要 |
坦癌患者において末梢血に遊離して存在する癌由来DNAのエピジェネティクな変化、すなわちhypermethylation(HM)を検出し、癌の早期診断に利用可能かを検討した。 1.PCRにて177塩基対のβアクチン遺伝子断片を作成し、これを牛血清に混入させ各種抽出法にてDNAを抽出した。また、豚末梢血管より上記のDNA断片を注入し各種採血管にて末梢血を採取した。抽出効率、再現性などより、血清採取、A祉キットによるDNA抽出を解析条件として選択した。 2、p16,APC遺伝子をターゲットとして、進行大腸癌患者血清20検体を解析した。1例のみで、APC遺伝子のHMを末梢血から検出可能であった。癌原発巣を解析するとP16では3例(15%)、APCでは5例(25%)にHMを認めた。原発巣におけるHMの低頻度が末梢血での低検出頻度の1因と考えられた。 3、より高頻度にHMが認められる標的遺伝子検索を進める目的で、大腸癌54例を対象としてp16、APCに加え、hMLH1、ESR1、CALCA、HIC1、MGMT、TIMP3、MYOD1を解析した。p16、APC、hMLH1、TIMP3のHMは癌特異的であったがその頻度は比較的低頻度であった。ESR1、CALCA、HIC1、MGMTでは高頻度のHMを認めたが、癌特異的ではなかった。一方、MYOD1のみが癌組織におけるHMが77.8%と高頻度かつ、正常組織におけるHMが5.6%と比較的癌特異的であった。 4、MYOD1をターゲットとし、上記の解析で対象とした大腸癌54例から採取した末梢血を解析した。原発巣においてHMが認められた42例中26例(62%)で末梢血においてもMYOD1のHMが検出可能であった。54例のすべての解析例を含めると末梢血により癌の存在診断が可能と考えられる頻度は48%(54例中26例)であった。
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