研究概要 |
薬効や副作用には個人間変動が大きい。その要因の一つとして、薬物代謝酵素の遺伝子多型に基づく酵素活性の差が挙げられる。 イリノテカンは各種腫瘍に対して高い抗腫瘍活性を示すが、骨髄抑制や下痢などの重篤な副作用が報告されている。イリノテカンによる副作用の個人差は、その活性代謝物であるSN-38の薬物動態に関連があると推測されている。SN-38の代謝的解毒過程であるグルクロン酸抱合は、グルクロン酸転移酵素(UDP-glucuronosyltransferase, UGT)の分子種であるUGT1A1によって行われる。UGT1A1のプロモーター領域やエクソン領域に遺伝子多型が存在し、酵素活性が異なることが示されている。 体重や体表面積によらない個別化(テーラーメード>薬物療法の確立を目指し、抗腫瘍剤イリノテカンの代謝酵素であるUGT1A1の多型別に、シスプラチン併用時のイリノテカンの第一相試験を計画した。施設内倫理委員会審査、施設内IRB審査を経て、臨床試験を開始した。これまでに3例の遺伝子解析を行ったが、現在までに第一相試験の登録に合致する症例は認められていない。 本研究の要である遺伝子多型の決定を、できるだけ迅速に、かつ正確に、しかも検査室レベルで安定して判定できるシステムを確立する目的で、インベーダー法によるグルクロン酸転移酵素遺伝子多型検査法の開発を行った。1塩基多型のUGT1A1*6ならびにUGT1A1*27ばかりでなく、2塩基多型のUGT1A1*28においても、シークエンスの結果と100%の一致率で遺伝子多型検出が得られた。
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