研究概要 |
慢性骨髄性白血病(CML)は、bcr/abl遺伝子の再構成の結果生じ、通常数年以内に急性転化し(急性白血病となり)、致死的な経過をたどる。急性転化時に生じる遺伝子異常に関してはp53を始めいくつかの報告はあるが詳細はまだ判明しておらず、これに関与する複数の、しかも現在までに報告がある遺伝子のみならず未知の遺伝子をも含めたその動態を明らかにするため、慢性骨髄性白血病(CML)慢性期患者2名および移行期、急性期患者3名のCML細胞からRNAを抽出、10,000個のcDNAをスライドグラス上にスッポトしDNAマイクロアレイを作製した。ランダムに遺伝子配列を調べ、約7500種類の遺伝子がマイクロアレイ上に存在することを確認した。慢性期又は急性期のCML検体をCy3の、健常人好中球から得られたmRNAをCy5の蛍光色素で標識し、DNAマイクロアレイ上で競合ハイブリダイゼーションを行った。各スポットの蛍光シグナルを定量し、慢性期、急性期のそれぞれで発現量が多い遺伝子、少ない遺伝子を検討した。正常好中球、慢性期細胞で発現がなくCMLの急性転化時に発現が増える遺伝子が10個、慢性期細胞にも発現があるが急性転化するとさらに上昇する遺伝子が62個、急性転化すると発現が減少する遺伝子が20個存在した。CMLの慢性期に較べ、急性期で発現が亢進する遺伝子に関しては、急性期には未分化な細胞集団が増えており、それらの細胞は慢性期には数が少ないため、単に未分化な細胞に発現が多い遺伝子を検出した可能性と、慢性期CML細胞が急性転化する際に発現が上昇した遺伝子を検出した可能性が考えられる。今後、慢性期患者検体の未分化な細胞分画を分離し、real time PCRやNorthern blottingで上記のどちらかを明らかにしていく必要がある。
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