研究概要 |
慢性骨髄性白血病(CML)はbcr/abl遺伝子の再構成の結果生じ、通常数年以内に急性転化する。急性転化時に生じる遺伝子異常の動態を明らかにするため、慢性骨髄性白血病(CML)慢性期患者2名および移行期、急性期患者3名のCML細胞からRNAを抽出、10,000個のcDNAをスライドグラス上にスッポトしDNAマイクロアレイを作製した。ランダムに遺伝子配列を調べたところ、約7500種類の遺伝子がマイクロアレイ上に存在した。慢性期および急性期のCML検体をCy3の、健常人好中球から得られたmRNAをCy5の蛍光色素で標識し、DNAマイクロアレイ上で競合ハイブリダイゼーションを行った。各スポットの蛍光シグナルを定量し、慢性期、急性期のそれぞれで発現量が多い遺伝子、少ない遺伝子を検討した。正常好中球、慢性期細胞で発現がなくCMLの急性転化時に発現が増える遺伝子が10個存在した。しかし、各臨床サンプルを用いreal time PCR法により慢性期および急性期でその遺伝子の発現を検討すると、実際には抑制性シグナルを伝達すると考えられるSHIP1(SH2-containing inositol 5'-phosphate)のみ、急性転化することにより発現が増加することが判明した。CMLの急性期には、慢性期に較べ未分化な細胞集団が増えており、単に未分化な細胞に発現が多い遺伝子を検出した可能性も否定できない。そこで、ヒトにおける造血幹細胞を含んでいると考えられるCD34陽性細胞と、陰性細胞でのSHIP-1の発現を検討したところ、差を認めなかった。よって、SHIP-1はCMLの急性転化に伴い発現が亢進すると考えられる。SHIP-1の発現亢進がCMLの急性転化に関与するかに関して、in vitro, in vivoでの検討が必要である。
|