研究概要 |
我々は、プラスミドDNAを安全かつ有効的に細胞内に投与し発現させることによる遺伝子治療の方法として、生体内電気穿孔法を開発してきた。まず、投与するプラスミドDNAの濃度、電気穿孔器の電圧、パルスなど最適な条件を検討した。その後、腫瘍に対する治療実験を行った。マウス実験腫瘍を用い、いくつかのプラスミドDNAの有効性を比較検討し、有効なプラスミドDNAを選択した。抗腫瘍効果を期待できるいくつかの遺伝子を用いてそれぞれの遺伝子の有効性や問題点を検討した。今回の研究の目的は、抗腫瘍効果が確認できた条件で、正常組織での安全性を確認することであった。方法としては、腫瘍局所で免疫系を惹起させる遺伝子(IL-2,MCP-1)や、遺伝子が発現すること自体は細胞毒性を示さず、後に薬剤を投与したときに細胞毒性を示すいわゆる自殺遺伝子(ヘルペスウイルスサイミジンカイネース、ジフテリアトキシン)などの導入を試み、それぞれの遺伝子における腫瘍縮小効果と安全性を検討した。マウス実験腫瘍で、最も抗腫瘍効果が見られた条件で、病理学的には、HE染色や神経細胞のマーカーを用い、また行動学的にはモニタリングを行うという方法で安全性の検討を行った。この結果、抗腫瘍効果の見られた条件でも、正常神経細胞には特に異常は認められなかった。また、行動異常を示すマウスの出現はなかった。以上より動物実験では、我々が開発した電気穿孔法の安全性が確認された。今回の研究の成果に基づき、今後われわらが対象としているグリオーマの合理的な治療法として、電気穿孔法を使った脳腫瘍の遺伝子治療を確立していきたい。
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