研究概要 |
1.目的 抗癌剤耐性因子の一つであるGlutathione S-transferase (GST)-πの特異的阻害剤を合成し、各種抗癌剤に対する耐性克服の可能性を検討した。 2.方法と結果 (1)GST-π特異的阻害剤の合成 生体内において安定なGST-π特異的阻害剤を得るために、既に報告したGST-π特異的阻害剤γ-Glutamyl-S-(benzyl)cysteinyl phenylglycineの長鎖アルキルエステル(hexadecylester)を合成し、HPLCで精製した。 (2)長鎖アルキルエステル型GST-π特異的阻害剤の安定性の検討 GST-π特異的阻害剤をin vitroでヒトエステラーゼまたは血清とincubateして半減期を検討したところ、いずれも60分以上であった。 (3)in vitroにおける抗癌剤感受性試験 GST-π発現の高い胆管細胞癌細胞株(HuCCT1)にGST-π特異的阻害剤を加えて4-HC(cyclophosphamide,CPMの活性体)に対する感受性をdye-uptake法により検討したところ、対照群に、比べてIC50は有意に低下した。同様にAdriamycin,CDDP,VP-16のIC50も有意に低下したが、5-FU,MMCなどのIC50は変化しなかった。 (4)in vivoにおける抗癌剤感受性試験 ヌードマウスの皮下にHuCCT1細胞を接種し、腫瘍径が5mmになったところでGST-π特異的阻害剤(d0,d1,d2)とともにCPM(d1)を投与したところ、4週間後の腫瘍体積は対照群(246±52mg)に比べて有意に低下した。同様に、adriamycinに対する感受性の亢進も認められた。 3.結果 長鎖アルキル型GST-π阻害剤は、in vivoにおいても各種抗癌剤の感受性を高めることが確かめられ、耐性克服剤としての有効性が示された。
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