腫瘍選択的増幅型ハイブリッドウイルスベクターの開発とその制御機構の解明

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 13218116
• 研究機関: 自治医科大学
• 研究代表者: 岡田 尚已 自治医科大学, 医学部, 助手 (00326828)
• キーワード: がん / 遺伝子治療 / ウイルスベクター / ハイブリッドベクター / アデノウイルス / レトロウイルス / アデノ随伴ウイルス / 遺伝子発現制御

研究概要

癌に対するより強力な自殺遺伝子治療システムを開発するため、ハイブリッドベクターを応用した腫瘍内増幅型ベクターの構築と機能解析を行った。(1)まず、アデノウイルスを骨格としたレトロウイルスとのハイブリッドベクターの開発を引き続き推進した。レトロウイルスの誘導をより厳密に制御するため、ヘルペス単純ウイルスのVP-16由来の最小活性化領域を反復縦列に並べたmutant rtTAを用い、tet-on遺伝子発現制御系の応用の可能性を検討したmutant rtTA下にtet-responsive element (TRE)-minCMVプロモーターおよびd2EGFPを搭載した単一発現カセットを構築した。この単一発現カセットを293細胞に導入し、Doxycycline投与前後の遺伝子発現を検討し、バックグラウンドの低い発現制御が可能であることを確認した。さらに、マウス下肢筋肉にべクターを注入し、生体内における遺伝子発現制御効果を確認した。(2)腫瘍内自己複製型ベクターとして、腫瘍細胞内でアデノウイルス初期遺伝子群を発現させ、AAVベクターを複製させるシステムを推進した。腫瘍組織内で、ウイルスの複製に必要な遺伝子を安定に発現させるために、PCMV-LTRのU3領域における抑制性転写因子結合領域を欠失させたレトロウイルスベクターを用いたEGFP遺伝子発現ベクターを構築しヌードマウス皮下腫瘍での発現経過を検討したところ、抑制性転写因子結合領域を欠失させた場合には、そうでない場合と比較して安定した発現が認められた。このベクターを用いてAAVの複製に必要なRep/Cap、およびアデノウイルス初期遺伝子群(E1,E2,E4/VA)を発現するベクターを各々構築し、複製効果を確認した。以上の基盤技術を各腫瘍の治療モデルに応用することにより、より有効な治療システムの開発が期待される。

研究成果

• [文献書誌] Okada T, et al.: "In situ generation of pseudotyped retroviral progeny by adenovirus-mediated transduction of tumer cells enhances the killing effect of HSV-tk suicide gene therapy in vitro and in vivo"J.Gene Med.. (in press).
• [文献書誌] Akiyama T, et al.: "Regulation of Osteoclast Apoptosis by Ubiquitination of Proapoptotic BH3-only Bcl-2Family Member Bim."EMBO J.. (in press).
• [文献書誌] Yamaguchi, et al.: "Enhancement of thymidine kinase-mediated killing of malignant glioma by BimS, a BH3-only cell death activator"Gene Ther.. 10・5. 375-385 (2003)
• [文献書誌] Kohno T, et al.: "Interleukin-10-mediated inhibition of angiogenesis and tumor growth in mice bearing VEGR-producing ovarian cancer"Cancer Res.. 63・16. 5091-5094 (2003)
• [文献書誌] Kanazawa T, et al.: "Suicide gene therapy using AAV-HSVtk/ganciclovir in combination with irradiation results in regression of human head and neck cancer xenografts in nude mice"Gene Ther.. 10・1. 51-58 (2003)
• [文献書誌] Kametaka M, et al.: "Reduction of CTLL-2 cytotoxicity by induction of apoptosis with a Fas-estrogen receptor chimera"Cancer Sci.. 94・7. 639-643 (2003)