研究概要 |
白血病関連転写制御因子遺伝子TELは12p13転座で再構成を受ける遺伝子であるが、造血制御にTELが果たす役割は不明である。今回はTELのMEL細胞における赤芽球分化に果たす役割を検討した。TEL発現MEL細胞はHMBAあるいはDMSOで分化を誘導するとモック細胞に比してベンチジン陽性細胞がより高率に出現することが明らかになった。TEL発現細胞はモック細胞に比して、分化前及び分化の過程でδアミノレブリン酸合成酵素及びβグロビンのmRNAがより強く発現していた。このことは、TELには赤芽球の分化を促進する効果が存在することを示している。一方、FLI-1及びGATA-1の発現レベルには変化はなかった。TELは検討したコリプレッサー(mSin3A,SMRT,CtBP,SnoN,c-Ski)の中で、mSin3Aとのみ共沈した。ヘリックス・ループ・ヘリックス領域を欠いた欠失変異体(ΔHLH)はmSin3Aとの結合能を失っていたことから、TELはヘリックス・ループ・ヘリックス領域依存性にmSin3Aと結合すると考えられた。ΔHLHはTELと同様のETS結合部位(EBS)への結合能を示したが、EBSを介する転写抑制能は消失していた。さらに、ΔHLHはTELのEBSを介する転写抑制能をドミナント・ネガティブに抑制した。ΔHLH発現MEL細胞をHMBAあるいはDMSOで処理しても全くベンチジン陽性細胞は出現しなかった。さらに、TEL発現MEL細胞にΔHLHを共発現させるとその分化促進効果は完全に消失した。TELはHMBAあるいはDMSO存在下での赤芽球分化を促進することが明らかになった。しかも、この効果はGATA-1あるいはFLI-1の発現変化を介さないものであった。
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