本研究においてDNase γを特異的に認識するモノクローナル抗体、hg302及びhg303の作製を行った。hg302は免疫沈降、免疫組織染色においてヒト、ラット、及びマウスDNase γを認識する特性を有していた。各種制癌剤によりアポトーシスを誘発したL929細胞におけるDNase γの局在をhg302を用いて調べたところ、興味深いことに生細胞においてシグナルは検出されず、アポトーシスを起こした細胞の核が染色された。すなわち、hg302はアポトーシス細胞の核に存在するDNase γを特異的に認識することが明らかとなった。ヒト卵巣癌培養細胞株NOS4細胞にDNase γを強制発現した系においても同様の結果が得られた。これらの結果から、アポトーシス誘発前後におけるDNase γのタンパクレベルはほぼ一定であることを考えあわせると、hg302は免疫染色においてアポトーシス細胞の核に局在する活性化DNase γを特異的に認識することが示唆される。一方、hg303はウエスタンブロットにおいてヒトDNase γを特異的に検出した。いずれの抗体においても、他のDNase Iファミリーエンドヌクレアーゼとの交差反応は観察されなかった。 今回作製された二種のDNase γ特異的モノクローナル抗体は、DNase γを特異的に検出するELISA系を構築するにあたり十分な特異性を有していることが判明した。今後、種々の癌細胞におけるDNase γの発現の有無を調べ、それと抗癌剤に対する感受性の差異との相関性について詳細に解析することから、癌の悪性度診断等への応用が期待される。
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