BCRPはhalf molecule型ABC輸送体で初めて抗癌剤耐性に関与することが明らかになった蛋白である。本研究で、BCRPがS-S結合を介したホモ2量体として存在することを明らかにした。BCRPの5番目の膜貫通領域に変異を持ち、それ自体で抗癌剤耐性を示さないL554P cDNAがdominant-negativeにBCRP発現細胞の抗癌剤耐性を低下させたことで、2量体形成の重要性が示された。また、BCRPの5番目の膜貫通領域の別の変異体であるN557Dを導入した細胞はmitoxantroneには野生型BCRPを導入した細胞とほぼ同程度の耐性を示したが、SN-38に対しては明らかに低い耐性しか示さなかった。よってこの部位に抗癌剤認識に関与するdomainが存在すると示唆された。estroneとestradiolがBCRPの抗癌剤耐性を克服することを見い出した。K562/BCRP細胞はK562細胞に比べてmitoxantroneに11倍の耐性を示したが、10μMのestrone 3μM存在下でK562/BCRP細胞のmitoxantrone耐性は1.8倍に減弱した。また3μMのestroneあるいはestradiol存在下ではK562/BCRP細胞のmitoxantroneに対する耐性はそれぞれ4.6倍、4.1倍に減弱した。同様にestrone、estradiolはK562/BCRP細胞のSN-38に対する耐性も低下させた。これらsteroidはK562細胞の薬剤感受性には変化を与えなかった。EstroneとestradiolはK562/BCRP細胞のtopotecan取込みを濃度依存性に亢進させたが、K562細胞のtopotecan取込みには変化を与えなかった。BCRP阻害作用を持つestrogen誘導体は抗癌剤耐性克服薬剤として応用できると考えられる。
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