●キメラ抗体の作製と複合体の合成:A7キメラ抗体を遺伝子組み替え酵母培養液から精製した。分子量4万のデキストランと抗癌剤(ネオカルチノスタチン、マイトマイシンC、アドリアマイシン)との結合体を合成し、抗体と架橋剤を用いて結合し複合体を合成した。その抗体活性および、抗癌活性がほぼ100%保持されていることを確認した。 ●抗体と抗原分子との結合に伴う細胞の機能変化の解析:抗体とともに癌細胞を培養することで、その増殖パターンや形態学的な変化を検討したところ、抗体の添加によりシャーレに付着した癌細胞は剥離する傾向を示し、形態学的にも非添加群に比較して球状に近い形態を示した。しかし、遺伝子レベルにおける増殖因子に関連した遺伝子変化は証明できなかった。蛋白レベルでは、接着因子の発現が抗体添加群でやや増強されたが、有意の差は認められなかった。 ●抗癌剤との至適組合わせの検討:A7と併用することで、ネオカルチノスタチン、マイトマイシンC、アドリアマイシン、シスプラチンなどはいずれも抗腫瘍効果は増強されたが、5-FU等の代謝拮抗剤ではその様な効果は認められなかった。 ●ネオカルチノスタチンと結合したデキストランとキメラ抗体との複合体の効果の検討:複合体単独、抗体単独、抗癌剤単独、抗体と抗癌剤の併用の4つの群に分けて抗腫瘍効果を検討した。標的癌細胞としてA7認識抗原の発現されている胃癌培養癌細胞株MKN45を使用した。最も高い抗腫瘍効果は複合体単独群および抗体と抗癌剤の併用群で観察され、両者はほぼ同等の抗腫瘍効果を示した。ついで、抗癌剤単独が抗腫瘍効果が高く、抗体単独では抗腫瘍効果は認められなかった。
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