研究概要 |
がん細胞の特性を利用して探索系を工夫し、天然物から新規物質を発見しそれらの活性評価ならびに分子標的との関わりを調べた。マレーシアの植物(主としてKopcia属)からビンクリスチンあるいはドキソルビシン耐性細胞に対する効果を10倍強〜26倍増強する物質を5種単離した。これら化合物はAspidofractinine型に属するインドールアルカロイド化合物であった。一方これらとは別に30種類の物質を単離してその活性を調べたところ、9種類に活性が認められた。現在さらに詳細に検討している。さらに、イソプレノイド化合物43種を合成した。このなかで、No. N-5228はP-gpを発現しているKB/VJ-300細胞(VCRに対して約91倍耐性)に対して25μMの濃度でVCRに対する感受性を25倍高めた。また、DXRに対する感受性を感受性細胞と同等のレベルまで回復させた。N-5228はin vivoでも耐性克服作用を示す(T/C=40%)。N-5228はP-gpに結合し、KBおよびP388細胞の薬剤耐性を克服するものと考えられる。 生薬センソより新規なIL-6阻害物質20S,21'-epoxy-resibufogenin-formate(ERBF)を単離した。ERBFはsubmaximalな増殖を示す1ng/mlのIL-2でのIL-2依存CTLL-2細胞、1ng/mlのIL-3依存Baf3細胞の増殖を阻害せず、2U/mlのTNFによるL929細胞の増殖抑制を阻害しなかった。さらにIL-4(10ng/ml)刺激によるU-937細胞表面でのFcεRII発現や20ng/mlのIL-8によるヒト好中球遊走、NGF刺激によるPC-12細胞の神経様細胞への分化も阻害しなかった。これに対し、ERBFはIL-6刺激によるPC-12細胞の神経様細胞への分化や、骨芽細胞と骨髄細胞の共培養による破骨細胞新生を用量依存的に抑制した(5μM以上の濃度)。また、Schild plot解析よりpA2は5.87±0.76、r=0.98であった。これらの結果よりERBFの阻害作用はIL-6特異的であり、競合拮抗的であること、さらにERFはIL-6とIL-6受容体の結合を阻害することがreceptor binding assayにより明らかとなった。今後、ヒトのモデルとなる実験系を用いて評価したい。
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