研究概要 |
がん細胞の特性を利用して探索系を工夫し、天然物から新規物質を発見しそれらの活性評価ならびに分子標的との関わりを調べる目的で研究を行った。 マレーシアの植物からVCR耐性細胞に対する効果を5倍強〜35倍増強する物質を6種単離した。これら化合物はAspidofractinine型に属するインドールアルカロイド化合物であった。このなかで、No.C330とC264はP-gpを発現しているP388細胞(VCRに対して約10倍耐性)に対して25μMの濃度でVCRに対する感受性を25倍高めた。また、DXRに対する感受性を感受性細胞と同等のレベルまで回復させた。C330はin vivoでもVCR耐性克服作用を示す(T/C=50%)。C330はP-gpに結合し、P388細胞の薬剤耐性を克服するものと考えられる。 Interleukin-6(IL-6)は生体の恒常性に関与する多機能性サイトカインであるが、その過剰産生は癌性悪液質、骨粗鬆症、多発性骨髄腫等の主要因子として知られている。従ってIL-6活性阻害物質はこれら難治性疾患の新たな治療薬となる可能性がある。IL-6活性修飾物質探索の過程において生薬センソより得られた20S,21-epoxy-resibufogenin-3-formate (ERGF)に選択的IL-6阻害活性が認められた事から、その類縁化合物について構造活性相関を検討した。IL-6阻害活性はMH60細胞のIL-6依存性増殖抑制とIL-6非依存性増殖を指標として評価した。IL-6受容体への作用はreceptor binding assayにて評価した。 14,15-Epoxy-bufalin (resibufogenin, Rg)は弱いながらIL-6阻害活性を示した。Rg-16-acetate (cinobufagin)、20,21-epoxy-bufalinにはIL-6活性阻害作用は認められなかった。一方、20,21-epoxy-Rgは増殖抑制作用が認められた。ERGFが選択的IL-6阻害作用を示すことから3位esterの誘導体を各種合成しその阻害活性を検討した結果、acetateにもっとも強いIL-6阻害活性のあることが認められた。 IL-6阻害活性発現には20,21-及び13,14-位のepoxy基が、さらに、16位のH基が必要であった。3位ester基はIL-6選択性に重要であると思われる。また、20R,21-epoxyは細胞毒性のみが現れることから、IL-6受容体はR, S-配位に高い立体選択性を示すことが推測された。
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