研究概要 |
造血幹細胞は最も古くから解析されている成体組織特異的幹細胞であり、現在遺伝子治療、再生医療への応用を含め、改めてその重要性が着目されている。しかしその生体外長期培養及び分化誘導法などは臨床レベルでは実用化しておらず、その原因として造血幹細胞の造血微小環境における制御機構が詳細にわかっていないことがあげられる。私達は浩血幹細胞の生存・増殖・分化に骨髄内造血支持細胞(ストローマ細胞)が必要である点に着目、造血支持活性を有するマウス骨髄ストローマ細胞株OP9細胞からcDNAライブラリーを作製し、レトロウィルスベクター(pMX-SST)によるシグナル配列単離法を用いて膜・分泌蛋白質をコードする遺伝子を単離した。合計234クローンの遺伝子を同定し、構造的に全て膜・分泌蛋白質と考えられた。内訳は既知遺伝子181未知遺伝子42であり、既知遺伝子は増殖因子49受容体23接着因子71その他38であった。未知遺伝子については、42クローンの内、重複して単離されたクローンが3種類あり、これらを含め得られた部分配列より構造を予測、その部分アミノ酸配列より高次構造を予測した。また、得られた全クローンにてマイクロアレイを作製、マウス・ストローマ細胞の造血支持活性を増強すると報告されている増殖因子LIFの刺激によるRNAレベルの発現量の変化を検定しRT-PCR法、ノーザン解析法にて、確認した。その結果、未知遺伝子の内3クローン(SST-1,SST-2,SST-5)においてLIFによる発現の増強を認めた。これらの方法によって同定できた新規遺伝子の内、7クローンの全長cDNAを単離し、遺伝子産物の構造を予測、造血支持活性を検定している。
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