研究課題/領域番号 |
13219001
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
野澤 志朗 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (90051557)
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研究分担者 |
荷見 勝彦 (財)癌研究会, 癌研究所, 部長(研究職) (70134608)
宇田川 康博 藤田保健衛生大学, 医学部, 教授 (80118918)
鈴木 光明 自治医科大学, 教授 (50110870)
市川 喜仁 筑波大学, 臨床医学系, 講師 (30302425)
小林 浩 浜松医科大学, 講師 (40178330)
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キーワード | 遺伝性子宮内膜癌 / DNAミスマッチ修復遺伝子 / 新アムステルダムクライテリア / hMSH2遺伝子 / マイクロサテライト不安定 / 家族内癌集積 / 重複癌 / スクリーニング法 |
研究概要 |
HNPCCとの関連から遺伝性子宮内膜癌が注目されている.今回我々は、多施設による遺伝性子宮内膜癌の研究会を発足させ、本邦における遺伝性子宮内膜癌とDNAミスマッチ修復遺伝子(MMR遺伝子)の異常との関連に注目し、分子疫学的解析を実施した。 1.研究参加6施設における子宮内膜癌症例517例に対する家系調査を実施し、8例の新アムステルダムクライテリアを満たす遺伝性子宮内膜癌症例および家系を発見した。本邦における遺伝性子宮内膜癌は全子宮内膜癌の約1.5%に存在することが明らかとなった。 2.遺伝性子宮内膜癌の発癌にはMMR遺伝子の異常が関与していると示唆されている。我々はhMSH2遺伝子に対する抗体を用いた免疫組織学的な蛋白の発現解析を実施した。解析した遺伝性子宮内膜癌症例6例中5例(83.3%)において腫瘍部のhMSH2の発現低下を確認し、遺伝性子宮内膜癌の発癌におけるhMSH2遺伝子の不活化の重要性が示唆された。 3.MMR遺伝子異常により生じるゲノム不安定はマイクロサテライト不安定性(MSI)と呼ばれる。MSIを示す自治医科大学病院子宮内膜癌症例14例にはMMR遺伝子変異を示す症例が存在しなかった。またMSIを示す慶應義塾大学病院子宮内膜癌症例11例のうち6例に重複癌などの家族内癌集積性を認めた点を考慮すると、遺伝性子宮内膜癌のスクリーニング法として、MSI検査の高い有用性は証明されず、詳細な家族歴調査の重要性が確認された。 4.慶応義塾大学病院子宮内膜癌症例と血縁者(計992人)を対象に家族内に発生した癌種や重複癌の種類を調査したところ、新アムステルダムクライテリアでHNPCC関連腫瘍でない胃癌の家族内癌発症例や卵巣癌および乳癌の重複例などが多数存在していることが明らかなった。本結果より我が国独自の遺伝性子宮内膜癌のスクリーニング法および診断基準の作成が必要であると考えられた。
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