研究概要 |
がん関連遺伝子(p16,p15,E-and H-cadherin、エストロゲン受容体)のメチル化異常と食道がんとの関連およびメチル化異常と環境要因との関連を検討した。調査開始前、各調査対象者には、調査の目的、方法等について説明をし、インフォームドコンセントをとった。サンプルは番号化し、個人の特定が出来ない様配慮した。210名中、p15,p16,E-cadherin, H-cadherin,エストロゲン受容体遺伝子はそれぞれ37(18%)、3(1%)、36(17%)、36(17%)、51(24%)であった。メチル化異常の頻度はエストロゲン受容体遺伝子に最も多く、p15が最も少なかった。食道がん高発地域(77名)と低発地域(50名)に限定して解析すると、メチル化異常が観察されたのは高発地域では77名中40名(52%)、低発地域50名中18名(36%)であった。E-cadherinとH-cadherinのメチル化異常はそれぞれ高発地域においては17名(22%)、17名(22%)、低発地域においては3名(6%)、4名(8%)で、明らかに高発地域において頻度が高かった(それぞれp<0.05)。p16とエストロゲン受容体遺伝子のメチル化異常は両地域において大差なく観察された。環境リスク要因とメチル化異常との関連性をみると、高発地域においては辛い物を好んで食べる者(1日1食以上)にE-cadherinとH-cadherinのメチル化異常が、父親に食道がんの家族歴を持つ者にE-cadherinのメチル化異常が多かった。また、豚の脂身の摂取量が多い者にエストロゲン受容体遺伝子のメチル化異常が多かった。
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