研究課題/領域番号 |
13220007
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
森脇 久隆 岐阜大学, 医学部, 教授 (50174470)
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研究分担者 |
奥野 正隆 岐阜大学, 医学部, 助教授 (10204140)
原田 実根 九州大学, 大学院・医学研究院, 教授 (00019621)
岡野 幸雄 岐阜大学, 医学部, 教授 (10177066)
末岡 尚子 佐賀医科大学, 医学部, 助手 (20321846)
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キーワード | 核受容体 / 発癌 / 化学予防 / レチノイド / レチノイドレセプター / リン酸化 |
研究概要 |
肝細胞癌(肝癌)はウイルス性肝硬変を母地とし高率に発生する癌腫である。教室で開発した合成レチノイド(ビタミンA誘導体)は肝細胞癌にアポトーシス(細胞死)を誘導し、肝(前)癌細胞クローンを硬変肝から消去することで、肝発癌を抑制することを臨床介入試験で明らかにしてきた。一方で天然レチノイドにはこのような作用はなく、肝癌はレチノイド不応性となっているといえる。このレチノイド不応性の機序として、我々はヒト肝癌組織およびヒト肝癌細胞株においてレチノイド核内受容体(RXRα)がErkによりリン酸化を受けることを明らかにした。リン酸化RXRαは転写機能を喪失しており、かつ細胞内に蓄積してdominant negativeに作用するため、正常なレチノイドの細胞増殖抑制作用を阻害し、細胞増殖を亢進して、肝発癌に関与する。一方、我々の開発した合成レチノイドは、Ras-Raf1/Erk系を阻害し、RXRαのリン酸化を抑制してその機能を回復させる働きを有することを明らかにした。このような合成レチノイドの付加的作用が、肝発癌予防に重要な役割を担っているものと考えられる。 現在まで多くの研究者が取り組んでいるにもかかわらず、特異的な遺伝子異常が見られていない肝発癌を、蛋白レベルでの異常による「核内受容体病」であると捉え、その機能回復が発癌予防につながるという独創的な病態機序の解明につながる成績である。
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