ヒト癌におけるムチン遺伝子発現ならびに新しい接着因子の発現と予後との臨床疫学的研究

2001 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 13220016
• 研究種目: 特定領域研究(C)
• 研究機関: 鹿児島大学
• 研究代表者: 米澤 傑 鹿児島大学, 医学部, 教授 (10175002)
• 研究分担者: 村田 長芳 鹿児島大学, 医学部, 教授 (60020765) ; 高尾 尊身 鹿児島大学, 医学部, 助教授 (80171411)
• キーワード: ヒト癌 / ムチン / 接着因子 / 免疫組織学 / 分子病理学 / 臨床疫学 / 癌患者の予後 / 手術適応

研究概要

ムチンに関しては、多数の膵胆管系腫瘍症例を免疫組織学的・分子病理学的に検索し、臨床疫学的解析結果と比較検討した結果、MUC1(膜結合型ムチン)とMUC2(腸型分泌ムチン)の発現を基準にした新しい分類法が予後と良く相関し、手術適応や手術術式の選択という臨床応用に役立つことを明らかにし、さらに、切除断端決定のためにムチン染色が有用である可能性をも示した。膵管内乳頭腫瘍におけるムチン抗原の陽性細胞と陰性細胞をマイクロディセクション法により採取し、ムチン遺伝子発現へのDNAメチレーションの関与の検索も開始した。また、大腸腺腫の癌化過程におけるムチン抗原の変化を超微形態レベルで解明すると共に、ムチン発現と細胞増殖因子標識指数等の相関から腺腫の悪性転化機構を推察し、さらに、その時代推移から、近年の日本における大腸癌の増加傾向の要因を検討した。一方、大腸癌肺転移巣におけるMUC1の発現増強や、予後の良い乳腺粘液癌におけるMUC2とMUC6(胃幽門腺型分泌ムチン)の高発現を明らかにした。非上皮性腫瘍においても、髄膜腫と聴神経鞘腫の鑑別におけるMUC1免疫染色の有用性を示し、また、網膜芽細胞腫の網膜光受容体細胞への分化を、新しいムチン様抗原"Mucin-like glycoprotein associated with photoreceptor cells (MLGAPC)"の発現から免疫組織学的に検討し、MLGAPCは網膜芽細胞腫における分化度の指標であると共に、網膜芽細胞腫の確定診断にも有用であることを明らかにした。
新しい接着因子に関しては、皮膚の扁平上皮癌と基底細胞癌において、トロンボモデュリン発現の局在が違うことを明確にした。また、胃癌の原発巣に比べてリンパ節転移巣でガレクチン-4の発現が上昇することを見出した。

研究成果

• [文献書誌] Nakamura, A., et al.: "New classification of intraductal papillary-mucinous tumour by mucin expression : Its relationship with malignancy potential"The Journal of Pathology. (印刷中).
• [文献書誌] Yoshii, N., et al.: "Expression of mucin core proteins (MUC1,MUC2,MUC5AC, and MUC6) in extramammary Paget's disease"Pathology International. (印刷中).
• [文献書誌] Yonezawa, S., et al.: "Expression of several types of mucin are related to biological behavior of pancreatic neoplasms"Journal of Hepato-Biliary-Pancratic Surgery. (印刷中).
• [文献書誌] Tsuji, M., et al.: "Photoreceptor cell differentiation in retinoblastoma demonstrated by a new immunohistochemical marker mucin-like glycoprotein associated with photoreceptor cells (MLGAPC)"Histopathology. 40・2. 180-186 (2002)
• [文献書誌] Li, A., et al.: "Expression of MUC1 and MUC2 mucins and relationship with cell proliferative activity in human colorectal neoplasia"Pathology International. 51・11. 853-860 (2001)
• [文献書誌] Wang, F., et al.: "Altered GalNAc-α-2,6-sialylation compartments for mucin-associated sialyl-Tn antigen in colorectal adenoma and adenocarcinoma"The Journal of Histochemistry and Cytochemistry. 49・12. 1581-1592 (2001)