研究概要 |
乳癌は女性においてもっとも罹患頻度の高い癌の一つであり、その発症機構の解明と、それに基づく有効な診断・治療法の確立は重要な課題である。これまでに乳癌発症に関連する遺伝子として、BRCA1ならびにBRCA2が同定されており、これらの遺伝子は、DNA損傷のシグナル伝達と組換修復反応に関与していることが判明している。こういった反応経路では他にも多くの遺伝子が機能しており、BRCA1,2以外に乳癌発症に関与する遺伝子が存在すると推定される。私はこれまでに組換修復において中心的な役割を担うRAD51遺伝子にアミノ酸置換を伴う一塩基多型(SNP)が存在し、このSNPと乳癌発症に相関がみられることを報告してきた。今回、この遺伝子多型の生物学的意義を検討するため、多型RAD51の発現プラスミドを作製し、多型RAD51の細胞内局在やBRCA2との複合体形成を調べたが、正常型との有意な差はみられなかった。次に他の組み換え修復関連因子の遺伝子多型と乳癌の関連を調べるため、Invader法によるSNP解析システムを導入し、これを用いたSNPタイピングの実験系を立ち上げた。 現在、Multiplex PCRによるゲノムDNAの増幅と、より小さい反応系でのInvader法によるSNPタイピングを試みている。この反応系を用いて組換修復遺伝子にみられるSNPについてタイピングを行い、得られたSNPデータは相関解析、臨床病理データ、乳癌の主要なリスクファクターなどとの関連を検定し、乳癌発症に関連する因子としての組換修復遺伝子多型の評価を続ける予定である。
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