本研究は人間の身体性を含意した新しい情報の単位を提案することを目的とする。情報を人間-環境系に創発する単位と捉える。情報には多種の感覚系を埋め込んで働いているマクロな身体-知覚系のふるまいと、身体-知覚系によって探索され見いだされているマクロな環境の構造の両者が含意されている。このように身体-環境系が接合する所に発見される身体性を含意した情報の単位を運動障害リハビリテーション、乳児の運動発達、表現活動における運動協調、などの解析を通じて明らかにする。 以下の課題を遂行した。 (1)運動障害リハビリテーションの記述。片麻痺者が魚から身を取る過程の縦断的な観察を行い、この種の行為を記述する枠組みを提案した。東京大学大学院教育学研究科紀要に論文としてまとめた。 (2)2名の乳児を対象にし、彼らが日常をすごしている場所での、ごく日常的な運動課題(食事、入浴、遊び、他者交流等)の長期縦断観察を開始した。 (3)表現活動における運動協調の検討。バイオリン奏者を対象として、演奏における身体各部の運動協調を同定し、解析し、記述した。 (2)と(3)の課題については継続して研究する。
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