運動障害リハビリテーションと乳児の運動発達での運動-環境との相補性を記述する試みを行った。運動障害のリハビリテーションでは一人の脳卒中者を対象として鰺の解体過程を検討した。患者の非マヒ手の箸による鰺への接触を「身を取る」、「障害物(骨や皮)を取る」、「全体の位置を変える」、「取った身の整理」の4種に分類し、一回の解体行為をこの4種の接触が推移する組織として記述した。4種の接触の時間上での再帰的構造を検討するための時系列分析を行った結果、患者の行為に於いて次第に身が操作可能な部分として現れてくることが示された。複雑な解剖学的構造を持つ動物身体から特定の部位のみを取り出すという課題が達成されるためには、反復する接触と鰺の配置の両方を調整することが必要であるとの結論を得た。 乳児の運動発達研究では、平成13年の10月と11月に誕生した2名の乳児を対象にし、家庭での日常的な場、たとえば入浴、繰り返される遊具との関わり、受動から能動が生ずる更衣、授乳、他者交流等の長期縦断観察を開始した。週単位で上記の出来事を収録し、出来事ごと時系列に並べ発達の推移を観測した。
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