二つの課題を行った。まず始めに障害者の運動発達研究を遂行した。頚髄損傷者が靴下を履く過程を縦断的に観察して、基礎定位系が他の身体の運動や操作の基底となっていることを明らかにした。姿勢の協調が同時的に探られていることを示した。 第二に「動くあかちゃん事典(日本語・英語共有版)」を制作し、その作業を完了した。この事典は、3歳までの乳児の行為を、その姿、発達の様子、それが行われる周囲のものや場所と共にデジタルビデオで収録し、全体で約150時間の記録から、行為と環境の意味がよく映っていると思われる、940(各約1分)の動画を抽出し、2枚のDVDに収めたものである。動画は、キーワード、年齢、氏名から検索できる。キーワードで最も多かったのは「母親」で、次に「両手」、「移動」の順で約900ある。年齢は月齢単位で検索可能である。たとえば「移動」を選択すると179件の動画がヒットし、年齢の若い順に移動の発達が示される。これに他のキーワードや月齢、あかちゃん名などをANDで掛けて検索すると動画がしぼられる。画面を選らび「連続再生」ボタンをクリックすると、見てみたい行為や場面だけをつなげた発達のドキュメンタリーをつくることができる。行為の発達、それが関連する場所を一挙に観察できる。行為とともに、行為を可能にしている環境の意味(アフォーダンス)にも興味を持って抽出した。たとえば移動に段差を掛け合わせると、移動が段差という環境とどのように関係しているのか、移動の発達が段差とどのように関連したのかつぶさに観察できる。 ロボット工学、インターフェース設計、リハビリテーション、プロダクトや建築デザイナン、発達研究、保育や教師など教育関連領域などに発達を知る新しい媒休を提供できたと考える。理系と文系の発達に関る研究の融合を可能にするツールとなることが期待でき、出版予定である。
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