研究概要 |
セキュアな意思伝達確認 紙ベースの情報環境において得られる安心感を,ディジタル情報環境においても利用者が実感できるようにすることを目指し,人間である利用者と携帯ハードウェアとの間にセキュリティ上のうまい枠組みをどのように設けるかにつき研究計画どおりに研究し基本的成果を得た.人間機械間暗号,非常時通報,耐タンパーソフトウェア,バイオメトリクス等につき研究成果を得たが,特にバイオメトリック認証技術の脆弱性評価研究については,極めて注目され,脆弱性評価に本格的に取り組むべきという取り組みを促進する原動力として期待されており,当初の計画では予想しえないほど大きな影響を社会に与えることになった.その概要は以下のとおりである. 瞳の周りの虹彩(アイリス)と呼ばれる筋肉の膜の模様が一人一人異なることを利用する虹彩照合技術がある.空港等での旅客の識別に利用されはじめているためその評価は極めて重要になっている.このため,虹彩照合技術の脆弱性評価に関する検討を開始した.虹彩照合技術に基づくバイオメトリック個人識別システムにとり,人工虹彩(虹彩を真似た人工物)によりひき起こされる潜在的な脅威は重大である.しかし,脆弱性の解析はほとんど開示されていないため,安全な個人識別システムを求める者には人工虹彩を用いた攻撃に対する虹彩照合技術のセキュリティレベルを理解するために実験的検討が必要となる.紙で作った人工虹彩を,異なる製造者により製造された市販の2機種の虹彩照合装置に提示する実験を実施し,人工虹彩が高い割合で受入れられることを確認した. 技術環境の変化への対応 時と共に攻撃者が利用できる技術力は変化していくという厳しい前提の下でのセキュリティに関しては,これまで,電子署名の偽造に係る問題の分析,タイムスタンプ方式および人工物メトリクスの評価法の提案などを行い,成果の一部を公表した.情報理論的安全性を有する暗号技術の研究でも理論的成果を得ている.
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