研究概要 |
本研究の主題は、i.i.d.(independent and identically distributed;独立同分布)2値系列を鍵系列とするストリーム暗号システムの構築である。既に、本研究代表者はその基本システムとして、日本および米国において特許申請を行い現在公開(各々、特願平8-99985,特願平7-274292、US Patent No.08/734,919)している。その基本システムは、実数値のカオス軌道を生成するカオス生成器(写像)と実数値・2値関数変換を行うための2値関数生成器とからなる。本年度の研究成果の主要結果は次の2点である。 1.既に研究代表者らが、i.i.d.2値系列が生成できるための条件は、カオス写像の不変密度(実数値の定常分布、測度)の均等分布性(EDP : Equidistributivity property)と2値関数の一定和性(CSP : Constant Summation Property)であることを明らかにしていたが、この2条件が2値系列の遅れ時間に関する無相関性の十分条件であることを明らかにした。更に,カオス実数値系列(無限アルファベツト系列)から有限アルファベット系列を生成するための量子化関数を2値関数からp【greater than or equal】2値関数や実数値関数へ一般化した場合でも二つの条件EDP, CSPが重要な役割を果たすこと及び,カオス実数値系列の独立性の必要十分条件等をsurvey paperとして纏めた。 2.従来上記カオス生成器としての写像は専ら、区分的線形写像や多項式型写像に限定されていたが、Jacobi楕円関数Weierstrass型楕円関数に基づく有理関数型写像にも拡張できることを明らかにした。特に、前者のタイプの有理関数は有名なChebyshev多項式写像の有理関数版であること及び、後者のそれは従来の実数値関数から複素関数への一般化となり、複素力学系や暗号分野における楕円暗号との関連を研究調査しなければならないことを指摘した。
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