Epstein-Barrウイルス(EBV)は伝染性単核球症の原因であると同時にバーキットリンパ腫等の癌と密接な関連がある。また、最近、EBV感染に対して重篤な症状を呈するX-linked lymphoproliferative diseaseの原因遺伝子としてSH2D1Aが発見された。本研究は、EBVの宿主細胞内での活動を制御するシグナル系の解明とその利用を目的としている。本年度は、従前の研究から見出したTRAF5/6によるEBVの抑制現象や、我々が同定したDok蛋白質とSH2D1Aとの会合に着目し、TRAF5/6によるEBV抑制機構の解明とDokによるEBV活動への影響に関する解析を計画した。 1.EBV潜伏時のゲノム複製開始点であるoriPの複製機能がTRAF5/6を介したシグナルにより抑制される機構に関しては、TRAF下流でp38MAPキナーゼがその複製活性の抑制に重要であることを見出した。そこで、EBVの複製に必須のウイルス蛋白質EBNA1がp38MAPキナーゼにより制御される可能性を考え、点変異導入法による解析を行った。その結果、EBNA1上のp38MAPキナーゼの標的となりうるアミノ酸の中でThr-534が複製活性に重要であることが示唆された。現在、p38MAPキナーゼによるThr-534のリン酸化について検討している。 2.本年度の研究から、EBVの感染時に宿主細胞のCD40シグナル系が重要な役割を果たしている可能性が提示された。現在、新たな課題として、EBVの感染過程においてCD40シグナル系がEBV及び宿主細胞に与える影響について検討している。 3.昨年、SH2D1Aが免疫受容体であるSLAM分子からDok等へのシグナル伝達分子であることが報告された。本研究においては、ヒトリンパ球での利用を念頭に、Dok/SH2D1Aシグナル系に関する解析を目的としたレンチウイルスベクター系を作成した。
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