結核菌のマクロファージ活性化と細胞内寄生の分子機構

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 13226042
• 研究機関: 京都大学
• 研究代表者: 光山 正雄 京都大学, 医学研究科, 教授 (10117260)
• 研究分担者: 河村 伊久雄 京都大学, 医学研究科, 助手 (20214695)
• キーワード: 結核菌 / マクロファージ / サイトカイン / 病原因子 / リステリア / エスケープ

研究概要

感染宿主に強いサイトカイン応答を誘導する細胞内寄生菌のうち、結核菌およびリステリア属菌が示すマクロファージ活性の分子機構を明らかにする目的で研究を行い、次の成績が得られた。1)結核菌生菌の培養上清中に存在するIL-12産生誘導活性因子のうち、プロテアーゼ処理で失活しDNase抵抗性の因子の精製を進め、分子量約13万の蛋白を最も比活性の高い候補分子とした。既知の熱ショックタンパクやα抗原とは異なることを支持する性状であり、さらに精製しアミノ酸配列の部分決定から遺伝子を決定したい。2)結核菌感染による宿主遺伝子発現のうち菌の代謝や細胞内での新たな菌側遺伝子発現によるものを解析する手段として、ストレプトマイシン依存性変異株を取得し、16SrRNAの530 loopに唯一の塩基変異を検出した。この菌を感染させSM存在の有無で解析を進めている。3)別種の細胞内寄生菌であるリステリア(Listeria monocytogenes)の主要病原因子LLO遺伝子(hly)の完全欠損株を樹立し、LLO関連タンパクの変異遺伝子をプラスミド性に導入し、サイトカイン発現の誘導には、菌体の食胞からの脱出が必要条件ではあるが十分条件ではなく、N末端のPEST配列に規定されたサイトカイン誘導活性を保有するタンパクがエスケープした細胞質内で産生されることが併せて必須であることが示された。

研究成果

• [文献書誌] Ito, Y.et al.: "Seeligeriolysin O, a cholesterol-dependent cytolysin of Listeria seeligeri, induces gamma interferon from spleen cells of mice."Infect.Immun.. 71(1). 234-241 (2003)
• [文献書誌] Kimoto, T. et al.: "Differences in gamma interferon production induced by listeriolysin O and ivanolysin O result in different levels of protective immunity in mice infected with Listeria monocytogenes and Listeria ivanovii."Infect.Immun.. 71(5). 2447-2454 (2003)
• [文献書誌] Mitsui, T. et al.: "Impaired neutrophil maturation in truncated murine G-CSF receptor-transgenic mice."Blood. 101(8). 2990-2995 (2003)
• [文献書誌] 光山正雄, 野村卓正: "細胞内寄生菌感染とIL-18"臨床免疫. 39(1). 41-47 (2003)
• [文献書誌] 光山正雄, 土屋晃介: "細胞内寄生菌感染とNO"医学のあゆみ. 204(9). 679-683 (2003)
• [文献書誌] 光山正雄: "結核免疫学の動向と課題"Kekkaku(結核). 78(1). 51-55 (2003)
• [文献書誌] 光山正雄: "Annual Review免疫(分担執筆)"中外医学社(東京). 315 (2002)