研究概要 |
樹状細胞は生体内に広く分布し、ウイルスや細菌などの侵襲に対して監視細胞として働き、それら由来の抗原ペプチドを特異的T細胞に提示し、獲得免疫応答を効率よく誘導する抗原提示細胞である。マウスにおいてはCD8αやCD11b, DEC-205の発現から分類される樹状細胞サブセットが存在し、機能的にも異なることが知られるが、粘膜免疫応答や感染免疫応答における役割に関しては詳細な検討が加えられてはいない。そこで、それらの生体内分布についてリンパ器官を対照としつつ皮膚や腸管・パイエル板・肺などの粘膜組織における検討を目的に、HIVの結合と輸送に関与するヒトDC-SIGNおよび表皮ランゲルハンス細胞に発現されるバーベック顆粒の構成タンパクであるLangerinのマウスホモログのクローニングを行い、それらのマウス樹状細胞サブセットにおける発現様態を調べた。 骨髄由来樹状細胞を用いて検討したところ、共に未熟な樹状細胞に発現され、活性化されるとmRNAの発現が著しく低下することが確認された。リンパ系ならびに非リンパ系の各組織における分布においては、DC-SIGNならびにmSIGNRは粘膜系組織に分布する樹状細胞や真皮樹状細胞に多く発現されているが、表皮ランゲルハンス細胞にはほとんど検出されないが、これとは逆に、Langerinは表皮ランゲルハンス細胞や脾、リンパ節などリンパ器官T領域に分布する樹状細胞に発現されており、胸腺髄質の樹状細胞にも認められた。しかし、腸管やパイエル板には検出されなかった。さらに、脾、リンパ節、肝の樹状細胞をCD8αとCD11bの発現を指標にCD8α^-/CD11b^<hi>とCD8α^+/CD11b^<lo>の2つの集団に分画して、それぞれの発現を調べたところ、DC-SIGN, mSIGNRは前者に、Langerinは後者に発現されていることが明らかになった。
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