固有宿主であるヒト赤血球に侵入する際に用いられる熱帯熱マラリア原虫の赤血球侵入関連因子群は、ラットなどの異種赤血球に侵入する際には、異種赤血球に存在するヒト赤血球類似の分子しか認識できないため、侵入経路が減少する。そのため、異種赤血球への侵入アッセイ系を用いると、ヒト赤血球には同様に侵入する原虫株間では隠されていた赤血球侵入能力の差が顕かとなる。この現象を利用して、ラット赤血球侵入形質に連鎖する約100kbの領域から見出した二つの赤血球結合蛋白相同体(三日熱マラリア原虫の網状赤血球結合蛋白相同体であるPfRH4および熱帯熱マラリア原虫の赤血球結合蛋白EBA-175相同体であるPEBL)に関して、HB3とDd2の両株における差を検討した。(1)これらの遺伝子には僅かの塩基配列の差異しか存在していなかった。(2)転写量にはほとんど差が見られなかった。(3)PEBLに関しては、いずれの株においても発現されておらず偽遺伝子であると考えられた。一方、PfRH4は少なくともHB3株では蛋白として発現していることが確認され、現在はDd2株における発現状況を検討している。 さらに、この100kbの領域に存在する赤血球侵入関連因子の候補のうち、既知の蛋白と全く相同性のない候補遺伝子群について、HB3株とDd2株において、mRNAの転写量をHB3とDd2株の間で比較するために、現在リアルタイムPCR用のプライマーの適正化を行っている。
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